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熊本地震から得た教訓

 

 2016年4月14日、16日に連続して起きた熊本地震。揺れによる建物の倒壊率は、東日本大震災や阪神大震災を上回り、大きな被害が出ました。

それから半年が経ち、その間、いくつかの調査報告も読みましたが、この度、まとまったレポートが出版されました。

 

なぜ新耐震住宅は倒れたか(変わる家づくりの常識)日経ホームビルダー編

 

 この本では、今回の地震の教訓と今後のあり方がわかりやすくまとめられており、大いに参考になりました。

 

 地震の被害は、単に本震の震度の大きさだけでなく、本震の持続時間や地震波の周期、地盤との関係、余震の大きさ・頻度など、様々な要因が影響します。特に、今回は本震と思われた1日半後にそれよりも大きい揺れが襲ったことが大きな特徴です。この揺れのダブルパンチにより、弱っていた構造体が一気に倒壊したのです。

 

 建築基準法では震度7が2回来ることは想定していません。2回目の震度7の揺れに耐えるためには、1回目の震度7の揺れによっても、変形が弾性限界内に納まり、少なくとも構造体には損傷がない状態でなくてはなりません。これはかなり大変なことです。建築基準法並みの耐震性では、倒壊はしないけれども損傷はやむなしとされているからです。

 

 それともう一つの問題は、現在の建築基準法は最低基準を定めたものでしかなく、特に木造2階建までの建物は構造計算の義務がなく、壁量計算という極めて簡便なチェック法しか求められておらず、しかも、建築士が設計していれば、確認申請の審査も免除されているので、構造的な常識ではありえないものが平気で立っていると言われてきました。

 

 どんなものかというと、例えば、壁の配置が偏っている。耐力壁の位置が1階と2階でバラバラ。壁を固めているのに床を固めていない、筋交いの向きが適切ではない、金物や釘の使い方が適切でないといったようなものです。そういうものはあって欲しくはないですが、現実には多くあり、今回の地震でも、案の定そういうものが被害にあっています。

 

 そして、今回、問題が顕在化したのが、筋交いの粘りのなさ。問題なく施工されたものであっても、許容応力を超えると簡単に外れてしまい、一気に用をなさなくなります。もちろんそういう特性はずっと言われてきたのですが、筋交いを使用する場合は、合板と併用するとか改めて対策が必要だと思います。

 

 今回の熊本地震や最近の原寸大振動実験の結果から言えるのは、構造的に適切な方法を採用した上で、建築基準法の1.5倍の揺れに絶えられる(耐震等級3)ようにすれば、倒壊だけは免れるだろうというものです。

 

 では、既存住宅の場合はどう判断し、どうすればいいのでしょうか。木造住宅の耐震性を判断する目安として、建築時期から推測する方法があります。建築基準法は1981年と2000年の2回にわたって耐震基準や施工法の見直しが行われたため、建築時期がいつかによって、より新しい時期に建てられた方が安全とされています。今回の熊本地震でも新しい方が明らかに被害は少ないです。

 

熊本地震における木造住宅の倒壊・崩壊率の比較(出典:なぜ新耐震住宅は倒れたか)
・1981年以前の旧耐震基準       32.1%
・1981年の新耐震基準以降2000年まで   9.1%
・2000年以降              2.9%

 

 ただ、これは一つの目安に過ぎませんから、個別の建物の安全性を判断するためには、耐震診断等で専門家の判定を受けなくてはいけません。そして、特に1981年以前の建物の場合は、多くが現行法規並み(耐震等級1)にも満たないという結果になりますから、当然、耐震補強工事が必要になります。

 

 そういう事情があって、私の事務所では、事務所開設時から新築住宅は全て許容応力度計算を実施し、新築木造の場合は、耐震等級3を取得するようにしているのです。リフォームも構造的な変更を伴う場合は、耐震診断を実施し、耐震補強工事も合わせて行うようにしています。

 
 
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